最初に言っておきますが、筆者は「AIって凄い」と思ってます。
なのでこの記事は「AIについて批判している」つもりは全くありません。
AIについて「現実的な話をしている」つもりで執筆しております。
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簡易版記事
AIは革命を起こしているが、それは「効率化」の観点での革命である。
AIで効率化します、と言ってるのは「宇宙人の知識を使います」に近い。
現実問題、ってのは結構意識したいテーマではあると思う。
導入:思考実験
筆者は「AIが革命を起こす」ことに疑いは持っていません。
※というか、すでに革命というべきことは起こってる。AIが革命を起こしたのは、単なる事実でしかない。
ですが同時に、何でもかんでも「AI万能、AI凄い、シンギュラリティ(技術的特異点)」とか言ってるのを見かけると反吐が出てしまいます。そんなわけないだろ、と思うわけです。
というのも、現在、AIが最も分かりやすく価値を生み出しているのは、「規格化・効率化」の観点での革命です。
AIが生み出した知識そのものが高付加価値になるケースと、AIによって既存業務を効率化するケースは分けて考える必要があるってのは意識したい。
これは簡単な思考実験(という名の仮説)を立てるとすぐに気づくのですが、少なくとも現在のAIの知性は「物理限界を超える事ができない」っていう当たり前の問題を持っているからです。
順番に説明してみます。
事例1:筆者が「アメリカ大統領になる方法」は存在するのか?
そんな方法存在しねーよ、と常識的な感性をしている人間は言うでしょう。
たぶん、9割ぐらいの人間との会話はこれで終わります。
ですが、AIは真面目です。
不真面目な人間と違い「バカなこと言ってんじゃねーぞ」なんて返答はしないでしょう。
きっとAIは筆者の質問を本気で考え、きっとこんな感じで応えてくれる筈です。
そして、きっとこんなことを言うのです。
AI「まず、アメリカの国籍を取得してください。これが絶対条件です」
AI「演説などを行う必要があるので、アメリカの標準語である英語は話せるようになる必要があります」
AI「支持層を獲得するために、すぐさまSNSプラットフォームを開設するべきです」
AI「資金面での耐久性も求められる可能性があるので、可能な限り資金を用意しましょう」
AI「日本と違い、アメリカは風評などがかなり重視される傾向にあります。一般人時代で弱みになるネットタトゥー的なものは、可能な限り処分しておきましょう」
と。
まあ、きっとこれぐらいは言ってくれるでしょう。
そしてこれを見て筆者は、「なるほど。つまりAIは、遠回しに「無理」って言ってる訳だな」と思うわけです。
ですが、ここで人とAIに意見の食い違いが起きています。
AIは一度も「そんなことは不可能です」とは言っていません。
「このような道筋をを辿ることで大統領になる事ができるかもしれないです」
と言っています。可能性は示してくれるわけです。
ですが同時に、その道筋は「物理的、社会的な制約を考慮していない」可能性でもある訳です。
だからこそ、AIの提示した方法を見た人間の側が、「つまり無理ってことじゃん」
と思ってしまうって話です。
勿論、筆者は小難しい屁理屈をこねたい訳ではありません。
言いたいことはシンプルで、つまるところ「知性は物理限界を超えない」という話を言いたい訳です。
なんでそうなるんだ、てのを次の項目で話します。
事例の仮説:知性は「可能性」だが、可能性は「魔法」ではない
「知性の物理限界問題」については、飛行機の話が分かりやすいと思ってます。
例えばですが、飛行機ってものがありますよね。
空を飛んでるあれです。
まあ色々と複雑な理屈で空を飛んでいる訳ですが、飛行機が「ライト兄弟によって作られた」ってのは、まあ大体の人に言えば通じるだろうと思います。
ライト兄弟は「空を飛びたい」と思ったから飛行機を開発した訳なのですが…
これを、「AI」という言葉に置き換えて考えてください。
仮に今現在という瞬間が「ライト兄弟が飛行機を発見していない世界線」だと仮定して、AIにこのように聞いてみましょう。
「人間が空を飛ぶ方法を発見せよ」
ここで、AIはWikipedia(ウィキペディア)的な「空を飛ぶ機械」の知識を持っていないとしましょう。
しかし、「重力」「空力」「流体」「材料/材質」「エネルギー」などの物理的法則は、理解しているものと仮定してください。
そうすると、AIは「人類がまだ飛行機を作っていない状態」から。
「この形状、重量なら。この推進力を使い、この速度を出し、この揚力が重力を上回るので、【空を飛ぶ機械】を現実に落とし込む事ができる」
という出力を行うことで、「この時点の人類が持つ、物理的制約」を飛び越えることが可能です。
いや、何を妄想のようなことを言いだしてるねん、と思うでしょう。
何故なら「材料どうするの」とか「工作機械は」とか「資金を誰が出すの」とか「法整備はどうなってる」とか、まあ言い出したらキリがないぐらい、「実現するためのハードル」が存在するからです。
ですが、世間一般的にいう「AIが様々な問題を解決する」というのは、これに近いのです。
あとはスケールの問題でしかありません。
つまり、AIが教えてくれるのは「既存の物理法則に囚われている回答」が基本な訳です。
もっとわかりやすく言いましょう。
2026年8月22日現在、トヨタ自動車の会長である豊田章男氏が存命しています。
界隈では有名な人物だとは思うのですが、仮にどこかの企業がAIで「豊田章男」を完全にコピーした「AI/豊田章男」を作り出したとしましょう。
そして「AI/豊田章男」を日産自動車の会長職に付ければ、日産自動車はトヨタ自動車になるのでしょうか?
まあ、なる訳がありません。
理由はとても簡単で、「豊田章男氏の意思決定能力を100%再現できるAI」が存在したとしても、それだけで日産にトヨタの工場、販売網、サプライヤー網、企業文化、資本、ブランドが出現するわけではない。
つまり、日本の中小企業にも全く同じことが言えるわけです。
超知性を持つAIを導入したから、東証1部クラスの企業がポコポコ生えてくるんだ! と考えてるなら、「流石にそれは無理だろ」と思うって話です。
補足:AIは、人間がこれまで認識していなかった解答方法を発見すること自体は可能
勘違いがありそうなので、ここは強調。
これ自体は幾つもあります。
・新しい素材/材料。
・薬品の組み合わせや候補(医療業界、特に製薬でのAIの活躍は目覚ましい)
・新しいアルゴリズム(投資とかで流行ってたりもしますね)
他にも、筆者が知らないだけでこの手の「誰も見つけていない解答方法を発見した実例」は無限にある筈です。
ですが筆者が言いたいのは「AIが未知の解答方法を発見する事と、現実世界の物理的な制約を消滅させることは別の話だ」ということです。
「知性が可能性を発見しても、現実世界の制約を消すわけではない」というべきでしょうか。
まあ、ニュアンス的にはそんな感じです。
結論:AIは「設計図をくれる宇宙人」に近い
というわけで、飛行機の話に戻りましょう。
たとえ人類が「飛行機」を開発していなくとも、AIは既存の物理法則を正しく認識していれば、飛行機を生み出す事は可能な筈です。ここまではタダの事実です。
で、そんなところに、例えばAI(という名前の宇宙人)が地球にやって来たとしましょう。
そして、宇宙人はこう言うわけです。
「惑星の条件に当て嵌めて物理法則を計算したところ、この方法なら空と飛ぶ機械を作る事ができます。図面はこれです」
と言って、人類に知識を授けてくれたとしましょう。
それを聞いた人類は
「すげぇぜ! これが宇宙人の知識だ! 革命だ!!」
となるとしましょう。
でも、この宇宙人(AI)は
・工場は作ってくれない。
・資金も出してくれない。
・人間を増やすわけでもない。
・材料を瞬時に生成してもくれない。
・法律を変えてくれる訳でも、機会の保証をしてくれる訳でもない。
こういう、「当たり前の制約」を同時に持っている訳です。
だからこそ、AIによって「知的労働の限界」が大幅に引き上げられて、それが革命を引き起こすことと。
AIによって「現実世界の生産能力」が無制限に引き上げられること。
この2つは、全く別の話ですよ、ということになるわけです。
まあAIがいくら知能を何倍に拡張してくれたとしても、現実世界の生産能力や付加価値がそのまま同じ倍率で増えるわけではない、ぐらいの話です。
纏め:価値を提示することと、価値を作れることは分けた方が良い
ソフトクリーム問題は「既に存在する付加価値を、AIで効率化すれば、その価値がどうなるのか?」を軽く考えてみました。
今回の記事では「AIが知識を与えても、現実世界の制約は消えない」という話をしてみました。
というわけで結論です。
「AIは大したことないよ」って話をしたい訳じゃありません。
逆です。
これまで人間が行っていた「知的な作業」を、まるで宇宙人から借りてきたような速度と規模で効率化できるってのが想像できる。
それが「誰にでも」想像できてしまうからこそ、AIは正真正銘の革命なのです。
実現しているからこそ、現実感がありすぎる。
ただし、宇宙人が知識をくれたからといって、地球上の物理法則まで変わるわけではありません。
これがほんとに大事。
まあ簡単に纏めると「AIによる効率化」と「価格の創造」を混同すると手痛いしっぺ返しを食らうぞ、という話です。
最後まで読んでくれてありがとう!