【考察全般】海底からレアアースを採掘する技術から考える、政治について

 結構ホットというか、なんか政治的なアピールを感じるのですよ。 

 

 最近というか、少し前からニュースで話題になってるやつです。

 「海底からレアアースを採掘するから中国に頼らなくて良くなる!」とか、なんかそんなことも言ってる人が居るやつです。実は政府、「海底からレアアースを採掘するから、輸入が減ってもダイジョブです」とは一言も言っていない罠ってやつ。

 日本語って難しいですねというか、わざとやってるだろってやつ。

 というわけで、筆者の経験も含めて「凄いこと」と「凄くないこと」を分けて感がて行きましょうか。
 遠心分離機の様に!

 

 

簡易版記事

 海底からレアアースを採掘する技術、実はただの実験だったという話。

 「いつかやる予定だった実験」を「なぜか今のタイミングでやっただけ」という話。
 実は海底からレアアースを採掘するって話、それ以上でも以下でもないのではないかって説。

 実運用って観点で見れば、明らかに机上の空論説。

 大体こんな感じの記事です。

 

 

まず時系列を纏める必要がある

 正確には、ってやつ。

 まず2011年:太平洋で「レアアースの泥」を東京大学が発見した。

 

 2014年:内閣府がSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の発足を行った。

 第一期 SIP(2014年~2018年)では、「次世代海洋資源調査技術(zip)」ってもの中で、南鳥島のレアアース泥の探査や試掘技術が組み込まれた。

 第2期 SIP(2018〜2022年度): 「革新的深海資源調査技術」って話で、水深6,000mから泥を引き上げる、泥を採取するってシステムの開発を継続した。

 第3期 SIP(2023〜2027年度): 「海洋安全保障プラットフォームの構築」の中で、試掘実験や実証試験が進行中。

 技術開発や調査自体は、実は複数の政権を跨ぎながら進められてきました(当然、第二次安倍政権時代にもやってます)

 

 内閣府 科学技術・イノベーション事務局「SIP概要資料」/SIP第三期実施計画ってので語られていたりします。
 読むのクソだるいので、ソースとして紹介するぐらいです。興味がある方はどうぞ。

 まあ要するに、「高市政権が人気取りのために、急に始めた話ではない」ってことを伝えたいのがまず一つ。
 同時に「2026年の夏に完成する技術もでもないのだから、この泥でレアアースをどうにかできる訳ではない」って話も知っておいてほしいのですよ。
 こっちには、政治色を感じますね。

 ニュースでは「この泥でレアアースが何とかできます」とは一言も言っていなかったように記憶してます。
 「泥の中にレアアースがあるんです。泥を採掘する技術もありますよ!」としか言っていないような気もします。

 これは優良誤認というか、国民が勘違いしただけって言い張るんですかね?

 

 

海底から泥を引き上げる難易度について

 筆者、以前に製紙工場の化学プラントで働いていた経験があります(唐突な自分語り)

 その際に、紙を作るために「パルプ」ってものを使うわけですよ。
 紙の元みたいなやつです。

 で、そのパルプを水に溶かしたりして、配管を使って製造設備に送ります。
 そして「タンクへ送るための流体濃度は、超ザックリ言えば5%ぐらい」ってのが分かりやすいイメージになります(勿論、細かく言えば場所などによって色々と違います。今回の記事ではイメージを優先)

 これ、要するに「100tの重さの水の中に、5tしか「紙の元」が入っていない」てイメージです。
 言い換えると、95t(95%)はただの水なのですよ。

 馬鹿みたいに水圧の強い巨大なポンプとかでも、色々な理由でその程度の重さしか押せない感じです(圧力損失とか、粘性とか、なんか色々あります。割愛)

 

 で、大事なのはここから。
 たかが「5%の紙の原料」を配管の中を送るためですら、でっかい工場設備が必要になります。

 これ、「深海底のレアアース泥」を引き上げる際にも、構造的には同じことが起こる筈です。
 要するに「水と泥を攪拌した原料を、何かしらの方法で引き上げる」って方法を選択するしかないのでは? と連想した感じです。
 煙突の原理なんかのように、泥が勝手に上がって来てくれるって話でもありませんし。

 ここまでが、実際の経験の話。
 で、ここから先は想像と仮定の話。

 そうなってくると、まあ紙の原料と同じ程度の引き上げを行えたとして、おそらく「レアアース泥」の体積濃度は5%程度(倍の濃度を引き上げられたと仮定しても、10%)

 つまり、ニュースでやってるように「50tの泥を引き上げました」ってのは、おそらく「950tぐらいの海水も引き上げました(その後分離して捨ててます)」ってのとほぼ同じ意味になる筈。
 10%濃度で引き上げられるなら、400tの海水で済みますが。それでも凄まじい量です。

  

 で、このレアアース泥の中に0.1%程度の濃度でレアアースが含まれていた、としましょう(1000ppm)
 レアアースの濃度は高かったり低かったりするらしいのですが、中国の陸上鉱床で500ppm~2000ppmの濃度らしいです。これだけを比較対象とするなら、確かに十分に高いと言えるそうです。

 上のリンクで、f検索で「ppm」って打てば出てきます。

 ですが、そもそもの話をすれば「レアアースを0.1%の濃度で含んでいる泥を、5%濃度で引き上げている」って現実があるって話の筈です。
 教科書のように「ただし海水含有率は含まないものとする」みたいに記載しても、現実問題として海水も引き上げちゃいますからね。

 そうなってくると、「輸送対象全体で見れば、実際のレアアース濃度は、0.005~0.01%(50ppm~100ppm)」って感じになる。

 

 つまり、今回のニュースを言い換えると、以下になると思います。

 ・まず最初に、1000tの泥水を引き上げました。
 ・次に、1000tの泥水から、50tの泥を抽出しました。
 ・50tの泥の中から、50kgのレアアースが入手できました(倍の濃度だとすると、100kgかも)

 この程度の話です。

 すごい! 我が国は凄いぞぉ!
 みたいなニュースに繋がるのかもしれませんね。

 でも個人的には、もう一言付け足して欲しい。

 技術実証(要するに実験)としては、確かに凄い。
 夢も希望もある。
 だが、この技術実証が「日本のレアアース事情を救う政治的な話題」なのかと言われると、全然凄くねぇと感じるのですよ。

 「海底から泥を引き上げて、レアアース含有した泥を入手できます」
 って話と。
 「中国からの代替案として、この方法でレアアースを何とかできます」
 って話は、分けて考えるべき。

  

 

実運用の観点から考えれば、コストが危険水準過ぎる

 ここから先も想像の話。まあ、過程の話です。

 この海底レアアースの話で大事なのって、「船の上じゃ本格的な精錬設備動かすの厳しいだろ」って部分だと思ってます。
 ぶっちゃけプラントの観点からすれば、海底6000mから泥を引き上げるって話より、その泥を「現在の実証船の規模で、工業プラント並みの処理能力を持たせるのは厳しい」って話に繋がると思うわけですよ。流石にね。

 

 ついでに言えば南鳥島は日本から約2000km離れているので、そうなってくると「南鳥島に巨大な精錬プラントを新設する」か「日本本土までレアアース泥(という名の殆ど海水)を持ち帰る」ってどっちかの選択をするしかない、て想像ができます。

 そして、「船の輸送費ってのはクッソ高い」のです。
 海上貿易関係には携わったことはありませんが、船の輸送費って「1日で数百万円」って単位です。でかかったり、工作船のような特殊な役割のある船なら更に金額は増えます。
 そして数字の上なら「南鳥島と東京の距離は2000km」ってサラッと書く事ができますけど、この距離って「台湾とか香港と同じ距離」ってレベルで離れてます。
 この距離にあるほぼ海水の泥を、船舶でピストン輸送とか、もはや狂気。あらゆる観点から見て、このプランは実現するのはまず間違いなく不可能。却下するしかない。

 そうなってくると「南鳥島にプラントを作る」ってプランしかなくなる訳です。
 消去法的な意味で。
 でもまあ、それはそれで環境汚染の問題がかなり深刻になるし、海の上に工業プラント建てると維持補修費が持続不可な事になりかねません、そもそも建設費用が間違いなくエグイし、大体そこで働く人間どうするの問題とか、まあ言い出したらキリがないと思います。

 

 輸送費の話に戻しましょう。
 中国の事情には詳しくないですが、少なくとも中国のレアアースは陸上鉱床。
 つまり大型トラックや鉄道などの「安い輸送手段」で運搬できる筈なので、コスト面で考えれば圧倒的に有利になるのは簡単にイメージできます。

 とりあえずの仮定として「船上輸送の場合、大型トラック輸送の5倍はかかる」と定義してみましょう(5倍では済まないでしょうが)

 

 製錬コスト:
 筆者、中国は簡単にレアアースを製錬してる、みたいな書き方になっちゃいましたが、そもそも中国だってレアアースの製錬にはクッソ苦労してます
 巨大な選鉱設備、薬液抽出、廃液処理。これらに伴う環境汚染など、それこそ「巨大な社会主義+資本主義の経済形態を持つ中国だからこそ」可能な方法で、「レアアースならば中国」のブランドを確立している。

 製錬処理そのものが簡単な話ではないですし、ましてや「レアアースを含有した泥があるから、レアアースは採取可能」みたいな話でもありません。
 レアアースに関しては、長年の成長戦略が実を結んだ結果でもあるので、「現状で正面から同じ分野で戦って中国に勝てるわけがない」(コスト的な意味でも、環境汚染的な意味でも)ってのは、大前提として念頭に置いておくべきです。

 

 というわけで、情報が出揃ったので簡単に考えてみましょう。

 濃度:
 ・中国、500ppm~2000ppm
 ・日本、50ppm~100ppm

 輸送費:
 ・中国の5倍。

 製錬コスト:
 ・中国よりは高い

 雑ですけど、こんな試算をしたとしましょう。
 濃度的な意味で、10倍。
 輸送費的な意味で、5倍。
 製錬コスト的な意味で、更に倍!!

 みたいな漫画に出てくるような計算になります。
 まあ、高くなると言っても限度があるだろ、の世界です。
 (一応注意ですが、この倍率はイメージの話です。以前の別の記事で「例え話としての仮定」を「実際の話」だと信じてツッコミを入れていた方が居たので、一応補足として注意しておきます)

 

 まあ要するに、「この技術は凄いけど、日本の経済的な救世主ではない」って話です。
 もうちょっと踏み込んでいえば、「今回の報道自体が、政治的な色を感じますね」って話です。 

 それと、あらゆるニュースはこんな感じで「実際の話」と「そう読ませたいんだろうな」って部分を分けてみてやれば、変な誤解や詐欺に引っ掛からなくて済むって主張したいです。

 

 最後まで読んでくれてありがとう!

 

 

About basuma

はじめまして! 2026年6月現在、徐晃サーバーにてプレイ中のバスマ!と申します。編成や戦術を考えるのが好きで、プレイ中に気になったことや普段考えていることなんかを記事にできたらと思います。良かったら感想下さいね!

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