ミケラが不気味だと思う。
そしてこれは間違いないのだが、作中のキャラクターも大なり小なりミケラの事を不気味であると感じている。
プレイヤー目線でミケラを見れば、ミケラは魅了の力があるから恐れられている、と思われているように感じる。
筆者的に言えば勘違いだ。ミケラが本当に恐ろしく、不気味であるのは、彼の知識と視点だと思う。どう考えてもおかしい。これをマリカとミケラで比較しながら考察していこうと思う。
-Contents-
ミケラの背景を確認(妄想力0)
確認が大事なので、まずはミケラの時系列順に並べる。
①ミケラはラダゴンの子として生まれる。マレニアとは双子。
②マリカの黄金樹がある時代に、自らの黄金樹を作ろうとしている(重要)
③黄金樹原理主義のラダゴンと決別し、無垢なる黄金と呼ばれる道を歩み始める。
④破砕戦争前に聖樹へ宿り、モーグによって聖樹から取り出される。(重要)
⑤影の地へ向かい、影の地で自らの体、力、宿命を捨てる。
⑥最終的に神の門にて、神として帰還する。
⑦ラダーンと共に主人公と戦闘。敗北する。
こんな感じ。
②とか、そんな記述ある? て思う人居そうなので、そのテキストを記載。以下、聖樹紋のサーコートのテキスト。
サーコートには、聖樹の紋章が描かれている
ミケラの血を受けた、聖なる芽生えの若木
だがそれは、遂に黄金樹とはならなかった
なぜミケラは聖なる芽生えの若木に血を与えると、黄金樹が作れると思ったのか(疑問点1)
DLCにて登場したNPCアンスバッハの発言を聞いていると、魅了の力も恐ろしいのは分かった。しかし本当に彼が異常なのは、その知識にある。
要所要所でやってる事が明らかにおかしい。
聖樹紋のサーコートのテキストに書かれていると言ったのだが、まずそもそもの話として、何故その当時絶対であるマリカの黄金樹がある時代に、新しい黄金樹を作ろうという発想が出てくるのだろうか? って疑問はずっとあった。
もう一度、聖樹紋のサーコートのテキストを確認する。
サーコートには、聖樹の紋章が描かれている
ミケラの血を受けた、聖なる芽生えの若木
だがそれは、遂に黄金樹とはならなかった
黄金樹を作ろうとしたその発想はマレニアを救う新しい法則を欲したと思えなくもないのだが、その解決方法が何故ミケラ(自身・デミゴッド)の血を受けた聖なる芽生えの若木を黄金樹にしよう、て発想になるのだろうか。
遂に黄金樹とはならなかった、の言葉を素直に受け取れば。結果的に黄金樹にならなかっただけで、この方法で黄金樹が作れることをミケラは知ってたとも読み取れる。
勿論、ここで記載された黄金樹が、筆者たちの想像する黄金樹とイコールではない可能性もあるにはある。祈祷「小黄金樹」など、黄金樹の名を冠しているが黄金樹ではない物っては存在する。なのでマレニアを癒す事が出来る黄金樹を作ろうとした、と無理矢理納得できなくもない。
しかしやはり、ミケラが何故自身(デミゴッド)の血を得た若木が黄金樹になると思ったのかと言う、そもそもの発想のスタートが全くの謎だ。
親であるラダゴンから聞いたという可能性はあるのだが、ラダゴンは現在の黄金律を絶対とする黄金律原理主義の思考がある。なので仮にラダゴンが黄金樹を作る方法を知っていたとしても、その方法をミケラに教えたとは思えない。順当に考えれば、知っていても隠すだろう。
一応魅了の力で聞き出したという可能性もなくはないが、そのためにはミケラが新しい黄金樹はどうやって作るのか? と質問の形式で聞かなければならない可能性が高い。
つまり順当に考えれば、
①ミケラは黄金樹が作れる事を知っていたが
②作る方法は知らなかった
このような状態であった可能性が高い。でなければ、質問自体が不可能である可能性が高い。
しかし今の世界に一つしかない絶対の象徴である黄金樹を、何かしら思う所があるとは言え、もう一つ作ろうと思うのだろうか。
実際、ミケラ以外の作中の登場人物は全て、今の黄金樹を自分なりに良く(改良)しようとはしているが、新しい黄金樹を作ろうなんて思っていない。新しい律を掲げる、律を遠くにやる事で干渉を弱める、黄金律へ手を加える。各々が「こうであれば良い」黄金樹(律)を作ろうとしている。ぶっちゃけ当たり前だ。
生まれた時からそこにあるのが当たり前で、なおかつそれが絶対であるという認識的な前提がある。黄金樹を新しく作るという発想自体が、何と言うかあらゆる観点から考えて意味不明なのだ。
しかし現実問題、ミケラは黄金樹を新しく作る、なんてぶっとんだ発想が可能って明言されている。
つまりその発想が可能という前提に立って考えれば、ミケラは知られていない筈の知識を知る術があったか。もしくは(理解が出来ないという意味の)天才と言う言葉でしか表す事が出来ない発想の天才だったか、のどちらかである可能性が高い。
筆者は前者に思う。後者は、作中では金仮面卿が一番近いように思うが、ミケラの発想とは性質が違うように思う。黄金卿のあれは、筆者に言わせれば「気付き」の極点に近い。まあこれは印象の話。
そして、ミケラは誰も知らない筈の知識を知っているのではないか? と疑う根拠がもう一つ出来た。
DLCのトレーラームービーの語りでは、ミケラの話を主人公に伝える、という形でレダが発言している。これはつまり、レダはミケラから授けられた知識を主人公に語っている事を示している。
つまりDLCの語り設定を加味すると、ミケラはマリカしか知らない事実を断片的に知っている可能性が高い。
何故ならマリカが神になった時、マリカ以外の黄金樹勢力が誰も存在していない、という事実があるからだ。またマリカが神になった経緯を考えると、仮に新しい黄金樹を作る方法があったとしても、それを誰かに教えるとは思えない(教える事で自身の黄金樹が殺される可能性が高いため)
祈祷「ミケラの光」のテキスト
絶対の神も、その王も
決して並び立つ事はない
これは新しい黄金樹(律でも神でも、呼び方は何でも良い)が生まれた時点で、新と旧の黄金樹はどちらかが倒れる事になる、という事を暗示しているように思う。
なぜミケラはマレニアの宿痾を抑える事が出来る道具を作る事が出来たのか(疑問点2)
祈祷「光輪」や祈祷「ラダゴンの光輪」にテキストがあるのだが、最初期の父ラダゴンと子ミケラはお互いに奇跡を贈り合う程度には仲が良かった。しかし黄金律がミケラの妹であるマレニアの宿痾に無意味であると理解した時、ミケラは父が絶対としていた黄金律原理主義を捨てた。
そして無垢なる黄金と称される道を歩み始めた。以下、祈祷「ラダゴンの光輪」のテキスト。
黄金律原理主義の祈祷のひとつ
父ラダゴンの、幼きミケラへの返礼
しかし、幼きミケラは原理主義を捨てた
それが、マレニアの宿痾に無力だったから
無垢なる黄金、そのはじまりである
つまり自称であるか他称であるかは分からないのだが、ミケラは、ラダゴンと道を違えて以降に「無垢なる黄金」と呼ばれるようになったらしい。そしてミケラの針のテキストが以下。
外なる神の干渉を退けるため
ミケラが紡ぎあげた無垢金の針のひとつ
狂い火を受領していても、それを鎮め
狂い火の王となる運命を回避できる
ただし、この針は未だ未完成であり
ファルム・アズラにあるという
時の狭間、嵐の中心でしか使用できない
ミケラがこの針をどのタイミングで作ったのか、正確に読み取ることは不可能ではある。しかし金色の針の事を、黄金ではなく無垢金と表現しているので、ラダゴンと別れた後に作ったのだろう事は想像できる。
ここで気になるのは、未完成とは言え何故ミケラは外なる神の干渉を退けられる針を制作する事が出来たのか、と言う事だ。
例えばだが、筆者の妄想が酷いのは良く分からないが神の所為だ、と仮定しよう。
その前提に則れば、神の影響が無くなれば筆者は妄想を止めることができる、と仮定しよう。
その神の影響を退ける事が出来る道具を、筆者は作る事が出来るのだろうか? という疑問だ。
個人的意見を言えば、作れないと思う。
これをミケラはマレニアの現状に当てはめてみる。
まず事実として、外なる神と言う物が存在する事は認識していた。しかしその事実を認識する事と、その影響を除外する事が可能である事を認識する事はイコールで繋がる事はない。何故なら、外なる神の影響を退けたという実績がどこにもないからだ。
例えばマレニアだが、彼女は腐敗を封じたと伝わっている剣士(もしくはその後継者)から剣を教わった可能性がかなり高い。これは事実だ。
そしてそれによって、腐敗をある程度抑える事が出来た可能性はある。しかしこれは推測だ。
関係がありそうなのは、タリスマン「青い踊り子」と「義手剣士の伝承」
青い踊り子のテキストは以下。
腐敗の神を封じたとされる流水の剣士と出会い、
青衣の踊り子を象った布人形
とても古い、伝承の遺物
青衣の踊り子は、妖精であったという
妖精は、盲目の剣士に流水の剣を授け
古き神、腐敗を封じたと伝わっている
義手剣士の伝承のテキストは以下。
生まれながら宿痾に侵された少女は
師と、彼の流水の剣と出会い
無双の翼を得たという
テキストをそのまま読み取れば、マレニアが得たのはあくまでも「無双の翼」であって、「腐敗を封じる術」ではない。
要するに腐敗の影響を封じたり退けたりする退魔の力を得たのではなく、あくまでも剣術に依存した物理的な力を得ているという事だ。流水の剣士は腐敗の神を封じたが、それはあくまでも腐敗の神の肉体を封印しただけであり、腐敗の神が与える影響である腐敗は退けられていない。
本編に当てはめるのであれば、主人公は腐敗の女神となったマレニアを撃退する事は可能だったが、マレニアを撃破する事で腐敗に塗れたケイリッドを浄化など出来ていない。本体を封じる事と、本体がもたらした影響を取り除く違いはここだ。
で、話をミケラに戻す。
何故ミケラは腐敗の影響を退ける事が出来る針が作れると思い。もっと言えば、それを作り上げる事が出来たのだろうか。更に言えば、ミケラはこの針が未完成であることを知っているとしか思えない記載すらある。
外なる神の干渉を退けるため
ミケラが紡ぎあげた無垢金の針のひとつ
ただし、この針は未だ未完成であり
ファルム・アズラにあるという
時の狭間、嵐の中心でしか使用できない
何故ミケラは、この針が完成すれば、外なる神の影響を退ける事が出来ると思ったのだろうか。重ねて疑問に思う。何故そう思ったのだろうか?
一応難しく考えなければ、永遠に幼い(変化がない)自身の肉体の特性と言うか性質を、この針を通す事でマレニアに移して変化を抑える事によって腐敗の影響を抑えようとしたのかもしれないが。やはり違和感は残る。得体が知れない、と言うのが当てはまる。
しかしこの違和感を、DLCのストーリーに当て嵌めてみれば面白い感じになる。
マリカは神の門で神となった。これは事実だ。
しかし、どのような方法で神になったのかは分からない。順番に疑問点を上げよう。
まず神の門と呼ばれるあの場所が、神として降り立つために必要な道具であるのか。それとも神として降り立つために必要な場所であるのかが分からない。
王が必要であるのは分かる。しかし王が何を指しているのか分からない。王の魂には依り代が必要であると言われている。その依り代が何である必要があるのか分からない。
なんなら神の門は、誰かが神になった場所としか言われていない。マリカが神になったのだろうとは、アンスバッハの想像であり、アンスバッハの言葉を聞いたプレイヤーの想像だ。無知の状態に立ち返れば、何故アンスバッハはマリカが神になって居た事を知っていたのか? という疑問が浮かばないだろうか? そしてマリカが神になった事をプレイヤーに教えたアンスバッハは、ミケラの魅了状態にあった。
ミケラは、おそらくマリカがやっている事をなぞっている。それは間違いない。
それは間違いないという前提で言うのだが、何故マリカがやっている事をなぞる事が出来るのか? という疑問に行きつかないだろうか。だって、マリカの行動は誰も知らない筈ではないか。
分かっているのは、神の門と呼ばれるあの場所で、マリカが神になったという事実だけだ。その事実すら、厳重に秘匿されていた。更にDLCの時間軸が、メスメルが行った粛清の後である以上、当時を知る可能性のある角人からこれらを聞く事はほぼ不可能ではないか、と思う訳だ。まあ、これは大分印象の話になるのだが。
不思議である。
ゲームをプレイしているプレイヤーの視点で言えば情報の開示があるのは当然なのだが、そのゲームで行動を起こしているキャラクターたちの視点では開示されていない情報が多すぎるように思う。
つまりプレイヤーからするとゲームであるから知ることができるとしか言えない情報の情報源が、ゲーム中ではその情報を知る事が出来ないようにしか思えないミケラなのだ。
ミケラの知識の出所は、一体どこなのだろう?
何故ギデオンは、誰かがミケラを聖樹から取り出した事を知っているのか(疑問点3)
ギデオンの主観でミケラを読み取ると、やはり異常さが浮き彫りになる。
まず何故モーグがミケラを聖樹から取り出したのか、という理由については、モーグが魅了されていたからだ、とDLCにて明かされた。
モーグは魅了されており、魅了されたモーグがミケラを聖樹から取り出した。これは事実だ。それは良い。しかしモーグが魅了されていたという前提があれば、おかしくなってくる会話がある。本編におけるギデオンとの会話だ。
…なるほどな。やはり聖樹は、抜け殻だったか
ミケラは聖樹に宿ろうとした
だが完全な宿りを前に、何者かが聖樹を切開し、幼子を奪った
…あの言葉、どうやら事実であったらしい
…厄介なことだ。百智卿が、こうまで識ることができぬとは
女王の憂いも、むべなるかな…
言葉通りに受け取ろう。
つまりギデオンは、まず話の出発点として、確証こそなかったが「聖樹が抜け殻である(ミケラが不在である)」事を知っていた。
そして「聖樹が抜け殻である」と思った根拠は「ミケラは聖樹に宿ろうとして、完全な宿りを前に何者かが聖樹を切開して幼子を奪った」と誰かから聞いたからである、と言っているように見える。
そして確証がなかったそれらの情報を、主人公が見届けた事によって「やはり」と確証を得たのだ。
正直に言えば、この時点でだいぶ意味が分からない。何故ならギデオンは聖樹エブレフェールの場所を知らない。加えて言えば、どのタイミングからであるかは不明だが、主人公が訪れるまで聖樹エブレフェールを外部の誰かが訪れた形跡はない。
つまりギデオンはミケラの状態を知るどころか、大前提としてミケラがどこに居るのかすら知らないという事になる。
更にここに「聖樹を切開してミケラを取り出したのが、ミケラに魅了されていたモーグだった」という事実も加えよう。
順番が逆になっている。普通はこうだ。
①最近では誰も訪れた事が無い、聖樹エブレフェールを主人公が訪れる。
②聖樹最奥にて、主人公はマレニアの言葉を聞く。そして聖樹にミケラの面影を感じ取って、ミケラが聖樹に宿ろうとしていた事実を知る。
③しかしミケラの姿が確認できなかった事と、聖樹の状態を確認する事で、ミケラが聖樹に宿りきる前に誰かが聖樹を切開してミケラを奪ったのだろうと想像する。
④そして、聖樹は抜け殻であった、と思い至る。
⑤この事実をギデオンに伝える事で、ギデオンは驚く筈だ。
実際、主人公はこの流れでミケラを見つけ、ギデオンに報告している。しかしギデオンの独り言を聞く限り、彼の認識は逆であるようにしか見えない。
①まず前提として、聖樹が抜け殻であると思っていた。確証はない。
②抜け殻だと思った理由は、ミケラが聖樹に宿ろうとした前提を知っていたから。
③ミケラが聖樹に宿ろうとした上で、誰かがそれを邪魔をした事を知っていたから。
④誰も訪れた事が無い場所で行われたこれらを知っており、しかし確証が無かったから主人公にこの事実を確認してもらった。そして確認した結果として、①~③が事実であると確信を持った。
続く言葉も、百智卿がこうまで知ることができぬとは、と言うものだ。
これは状況と文脈を加味して考えれば、主人公に教えてもらうまでミケラの状態を知る事が出来なかった事に加えて、おそらくギデオンが全く知らない(おそらく想像すらしていなかった)事実を誰かから囁かれた事による、認知力の遅れを自虐した言葉にも見える。
この会話から想像できるのは、ギデオンはミケラ(もしくはマレニア)以外が知っている筈がない事実を何故か知っている。
怪しいのは、最後に出た女王というワードだろう。
女王の憂い。
つまり、こうなる事を女王は憂いていた、と言う意味だろう。もしくはこうなった事を女王は憂いている、と言う意味か。
順当に考えれば、ここで言われる女王とは「永遠の女王」マリカの事だろう。
しかしミケラが聖樹に宿ったのは破砕戦争の際であり、つまり「永遠の女王」マリカが罰により磔にされた後の話になる。なので、この事実を「永遠の女王」マリカから直接聞く事は不可能、と言う事になる。
つまりマリカの状況も含めて考えれば、マリカはミケラがこのような行為に及ぶ事を予想しており、そうなるのではないかと憂いていた、と取るのが順当に思う。
ちなみに、百智シリーズのテキストは面白い事が書かれている。
知とは、自らの無知を知ることであり
知ることの終わりなきを知ることである
だが、女王マリカの遺志に触れた時
ギデオンは恐れてしまった
あるはずのない終わりを
分かりにくい。かなりの部分を、受け取り手に依存している。その上で、筆者は以下の様に思った。
恐れてしまったという事は、想像してしまった、と言う事だ。予想してしまった、と言い換える事が出来る。もしそれが将来起こり得る断定された事象であれば、「ギデオンは恐れた」と書くはずだ。何故なら、恐怖するべき事象が確実に発生するのであれば「恐れてしまう」のではなく「恐れる」からだ。
こう言えばニュアンスは伝わる気がする。
明日の12時に、あなたは問答無用で死ぬ(断定)と仮定しよう。この時、それを宣告されたあなたは「恐れる」のだろうか。それとも「恐れてしまう」のだろうか。
明日の12時に、あなたは問答無用で死ぬかもしれない(予想)と仮定しよう。この時、それを宣告されたあなたは起こるかもしれない未知を「恐れる」のだろうか。それともその未知を「恐れてしまう」のだろうか。
断定と予想の違い。「恐れる」のか「恐れてしまう」のか。その違いだ。
話を戻そう。
防具テキストを考えれば、ギデオンは知る事の終わりなきを知ることの消失を恐れた可能性が高い。つまりミケラを見つけた際の会話と合わせて考えると、予知にしか思えない高精度な予想を行うマリカを恐れた可能性もある。
もしく女王の意志に触れた時、の言葉に比重を置いて考えれば、これまでの出来事全てがマリカの手の平の上であったので、その様がまるで全てを操る神そのものであったから恐れたのか。
話がそれまくってる。ギデオンの話ではないので、この話題の深堀はここまでにしよう。
とりあえず重要なのはミケラだ。
知識の出所が不明なのだ。
まるで何もない場所から湧いてきたように、疑問より先に答えが先行しているような、何とも言えない気持ち悪さと言うか、違和感を感じる。筆者だけだろうか。
ティエリアとトリーナのイベントは、今までの疑問を解決する可能性を秘めている気がする
DLCにて、知る事が出来ない知識を知る瞬間に立ち会う事が出来る。
ティエリアとトリーナのイベントだ。
まあざっくりと言えば、トリーナの蜜を4回飲む(死ぬ)事でトリーナの声を聴く事が出来る、というイベントだ。ちなみに筆者は攻略サイト見るまでこのギミックに気付きませんでした。誰が気付けるんだよ、これと思う。
とりあえずこのイベントの何が面白いかって、先で上げた疑問点を解消してくれる可能性があるって点が面白い。
以下がトリーナの会話になる。3種類ある。
…ミケラを、止めて
あの子を、神にしないで…
あの子にとって、神は牢獄
檻の中の神は、誰も救えない
…ミケラを、殺して
あの子を、許してあげて…
すべてトリーナのセリフではあるのだが、個人的注目ポイントなのは2つめ。
ミケラにとって、神は牢獄。
織の中の神は、誰も救えない。
この部分だ。この部分を聞いたプレイヤーは、漠然と以下のような事を思うのではないか、と思う。
ミケラは神になる。だがミケラにとって、神とは牢獄であるらしい。つまり神になったミケラは、実際には誰も救えないのではないか。しかしこれも当然だが、ミケラは神となって優しい律を敷く、と公言している。
つまりここで、誰も知らない筈なのに先に結論が来ている答え(ミケラは神となっても誰も救えない)と、結論ありきの後にくる事実(ミケラが神になる)という構図になるのではないだろうか。
まあつまり何が言いたいのかと言うと、誰も知らない筈の事実を誰かに教えていたのはトリーナではないのか、という仮説だ。良い感じに妄想力が高まって来た。
ミケラの宿命を考察(妄想力MAX)
ミケラは全てを捨てたとされている。
力、黄金の体。そして宿命。
力は魅了のルーンの事だろう。黄金の体は、言葉通り。
ならば、宿命とは何を指しているのだろうか?
半身であるトリーナを捨てた、という事実は確認できる。しかしトリーナを捨てたという事は、優しさを捨てたとゲーム内で表現されているように思うが、トレーラームービーでは宿命を捨てたと表現されている。
ちなみに、宿命の意味は以下になる。
前世から定まっている運命。避けることも変えることもできない運命的なもの。
避ける事が出来ない運命的なものを、しかしミケラは捨てる事によって回避しているとも取れる。言い方を換えると、ミケラはトリーナを捨てなければ、前世から定まっていた何かしらの運命的なものに衝突していた可能性が極めて高いという事になる。
そして衝突を避ける必要があるという事は、その運命はミケラの敗北(失敗でも何でも、言い方は自由だが負の意味で決着を見るという意味だ)によってその運命は決着する可能性が高い。仮定の話だが、もし宿命が勝利で幕を閉じるのであれば、ミケラは宿命を捨てる必要が無いとも言える。基本的には、という意味になるが。
ミケラの大ルーンのテキストは以下になる。
棄てられたミケラの大ルーン
完全に壊れており、恩恵が戻ることはないが
ただ、魅了に抗う力だけが残っている
ミケラは、影に隠された塔に向かった
その黄金の身体も、力も、宿命も
全てを棄てて
はじまりから続く因果を超えて
全てを抱く、新しい神になるために
テキストをそのまま読み取ろう。
そうなるとやはり気になるのは、はじまりから続く因果を越えて、の部分。
ユミル卿にミケラの事を聞く事が出来る。以下会話。
…ミケラ、あの幼き者は感じていました。
自らの出自が、血が、如何に汚れ、狂っているのかを。
悲壮な事です。
それが故に、すべてを捨ててしまおうなどと。
ああ、すべては母の罪だと言うのに。
そしてユミル卿は、立ち位置としては信用の出来ない語り手だ。
信用できない語り手である理由は明確だ。これはユミル卿がアンナと言う傀儡を使っていた事と、傀儡を使っていた事実を主人公に隠した事からも分かる。つまりユミル卿は、基本的に嘘を吐く可能性のあるキャラクターとして示されている。
ちなみに信頼できない語り手とは、分かりやすく言えば「意図的に誤解を与える会話を行う人」の事だ。テキストは嘘をついていない、という前提でミケラの語りを比較すると、ユミル卿の嘘が見えてくる。
大ルーンテキスト → ミケラは黄金の体と力と宿命を捨てた。そしてすべてを捨てて始まりから続く因果を越えて、すべてを抱く神になろうとした。
ユミル卿 → 出自が、血が、汚れて狂っている。だからすべてを捨てた。すべては母の罪だと言うのに。
論調が若干ずつずれている。
ミケラの大ルーンは、あくまでもミケラは始まりから続く因果を越えるために、黄金の体と力と宿命を捨てて神になろうとした、と書いている。そしてフレーバーテキストは絶対に正だ。つまり、ここで書かれている事が大前提として絶対に正しい。
つまりユミル卿が言うように、別に血が汚れているとか狂っているとか、その罪悪が母の罪だとかって事は、何処にも書かれていない。ぶっちゃけ指の母メーテールが今の狭間の地に起こっている全ての原因だというのは、ユミル卿による褪せ人(プレイヤー)への印象操作の可能性が高い。
指の母の追憶のテキスト。
影樹に刻まれた
指の母、メーテールの追憶
指読みにより、主の力を得ることができる
また、使用により莫大なルーンを得ることもできる
全ての二本指、そしてユビムシの母は
大いなる意志の輝ける娘にして
狭間に落ちた、最初の流星であった
指の母は、狭間に落ちた最初の流星と語られている。そしてメーテールは全ての二本指や、ユビムシの母でもあるのだろう。加えて大いなる意志の輝ける娘でもある。つまり女性体だ。
すべて事実なのだろう。そして、それ以上の事は書かれていない。
大いなる彼方の杖のテキスト
母は、大いなる意志の波動を受信していた
壊れ、棄てられた後も、ずっとそれを待ち続けた
大いなる意志の波動を受信していた(過去形だ) 壊れ、捨てられた後も、ずっとそれを待ち続けた(現在形だ。つまり、今は受信できていない)
見つめる指のテキスト
その先端の指腹、指紋の皺の中心には
ほんの小さなイボのごとき瞳が
虚ろに彼方を見つめている
重要な事実は何も語っていないように思う。敢えて読み取ろうとするのであれば、虚ろに彼方を見つめている、という文章は「彼方にいる大いなる意志を見る事が出来なくなっている」という意味ではないかと思う。虚ろに見るとは、焦点があっていない、という意味だ。
つまりフレーバーテキストには、指の母メーテールが悪意を持って狭間の地に何かを成した、とはどこにも書かれていない。勿論、筆者が見逃している可能性はあるのだが。
ちなみにユミル卿の魔術に書かれている「嘯く」と言う言葉には、とぼけて知らないふりをすることや、偉そうに大きな事をいう、って意味がある。真実を語る、という意味は含まれていない。
前置きが長くなったのだが、そんな感じで、この記事ではユミル卿が言っている事は嘘だ、という前提で話をしよう。
つまりミケラの宿命とは、出自が、血が。汚れていたとか、狂っていたとか。そういう物に起因するものではないのだと思う。多分だが。
長くなった。ユミル卿の語りやトリーナの発言、テキストなど全て合わせて宿命について考察してみよう。
①ミケラの宿命は、彼の血統に起因するものではない。
②しかし、捨てなければ神になる弊害のあるものではあった可能性がある。少なくとも何かしらの因果を越える事は出来なかったと思われる。
③同時に、神になる事はミケラにとって檻の中に入る事に近い意味があった。
……分からない。
これらの条件を満たす宿命とは、一体何なのだろうか。
考えていて、閃いた。
恐らくと言う言い方になるが、トリーナ関連のテキストなどを見れば眠りと言う現象を通す事でトリーナは人に声を届ける事が出来ると思われる。
またファリスの製法書の記述やティエリアの薬の記述を加味すれば、更に踏み込んで言えばトリーナは眠りの中にしか存在していない。そして恐らくだが、その眠りは微睡みだ。何故ならエルデンリングはDLCにて、深く眠る事を死で表現している。
そしてトリーナだが。
花に見える。
植物人間。花人間に見える。何時かマリカの時に語った気もする。
捨てられた瞬間は人の形をしていたと思われるのに。
捨てられると、こうなっている。
そして、ミケラは聖樹に宿ろうとしていた。
神になって以降のミケラを今世と呼ぶのなら、デミゴッドであった時代は前世と言えるだろうか? いや、言える(反語)
つまりミケラの宿命とは、植物に宿る(もう少し植物的に言えば、どこかに根を張る)事で、助けを求める者たちの標になることではないのだろうか?
トリーナ的に言えば、誰にでも訪れる眠りと言う現象を通す事で、誰にでも声を届ける事が出来るのが本来のミケラという神格なのではないだろうか? 事実トリーナは、昏睡する主人公に声を届ける事が出来ている。そしてトリーナの声がティエリアには届いていない。
もう少し言えば、神に近づく事は、人から離れると言えるのではないだろうか?
つまりトリーナが神がミケラにとっての檻と言い。檻の中の神は誰も救えないと言ったのは。
まだデミゴッド(半神半人)だったミケラが神になる事によって、人に声を届けられなくなっている事を指しているのではないだろうか。
妄想、楽しすぎる。
付き合ってくれてありがとう!