古くから ドールズフロントラインを遊んでいる方にはおなじみのイベント深層映写-Deep Dive-。ここでは404小隊の中心人物であるUMP45と、そのUMP45に大きな影響を与えたUMP40のドラマを垣間見ることができます。
しかしイベント実装当時から複数の指揮官に指摘されていたことがあります。それはUMP40の人格に少し違和感がある・辻褄が合わないという点です。
UMP40はイベント中の物資箱777個報酬で入手できました。しかしその前にストーリーを見終わった方が多かったため、「シナリオに登場するUMP40」と「実際に司令部に配属されるUMP40」の性格が合わないだろうーというものですね。
端的に言うと、物資箱から出てくるUMP40は頼りなさすぎるという主張です。
当時、一番声があがったのはUMP40の修復ボイス。すぐ泣いちゃうUMP40に対し、「40はそんな泣き虫じゃないだろ!」「もっと明るくて元気なはずだ!」という指摘が多かったように思います。
私は別段そうは感じなかったのですが、もし仮にその主張「UMP40別人格説」が事実とするなら、なぜこのような違いが起きてしまったのでしょうか。公式がそのような設定ミスをするとは思えません。
今回はその主張「UMP40別人格説」が正しいことを前提に、UMP40の性格が違ったとしても物語の辻褄が合うように私なりの見解を載せていきます。
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まず結論から
UMP40の性格は違ってて良い
結論から言うと、UMP40の性格は変わってても問題ありません。むしろ変わってて当然です。そしてそれは何もUMP40に限った話ではなく、姉妹機であるUMP45についても同じことが言えます。
もともとUMP40(およびUMP45)はグリフィン産まれの人形ではありません。実はとある理由で、別の場所で作られた機体です。
その理由とは『ある極秘ミッションを遂行する』こと。そしてそのミッション遂行にあたって製作者は、彼女たちを制御しやすくするため、「あまり自分勝手に動かないような性格に初期設定していた」と考えられます。
UMP40とUMP45の性格は「もともと弱さを含んだ」不完全なものである。そう考えると、全ての辻褄が合ってきます。
そもそもUMP45とは何者なのか
UMP40について考える際にどうしても外せないのがUMP45です。404小隊という、裏の仕事を専門に行う部隊のリーダーです。
UMP45はその名称から同じような名前のUMP9と姉妹機であると考えられることがあります。これは見た目が似ていることや、使用している銃の種類がH&K社のUMPシリーズに由来していることが原因です。
UMP45はともするとUMP9の姉であると思われています。確かに銃の由来で考えると姉妹と考えて問題ないのですが、それは銃…つまりスティグマの話であって、人形本体とは関係がありません。
銃と切り離して考えた時、人形としてのUMP45とUMP9はまったく違う個体です。
UMP45とUMP9は姉妹機ではない
秩序乱流-Continuum Turbulence-をプレイした方なら見覚えがあると思いますが、UMP45が危機的状況に陥った時、HK416がUMP9に対して「同じ型番なんだから何とかしろ」と言うシーンがあります。
しかし彼女は、自分と姉は人形としての型番が違うことを理由にできないと答えます。
同じUMPシリーズなのに個体として作りが違うことになっていることに驚いた人もいるかもしれませんが、UMP45はそもそもIOPの製品ではありません。それではUMP45とは何者なのでしょうか。少し時を遡ります。
秩序乱流の少し前、深層映写の頃。404小隊が鉄血にハッキングをしかけるミッションがありました。指揮を執っていたのはUMP45。対する鉄血の防衛部隊はデストロイヤーとドリーマーです。
ドリーマー(厳密にはデストロイヤー)は作戦行動中にオーガプロトコルを利用して潜入してきた「自分たちと似たような侵入者」を発見します。
グリフィンの人形は連絡系統としてツェナープロコトルを使用しています。鉄血はその上位ネットワークとしてオーガプロトコルを使用しています。つまり通常ではグリフィン産の人形であればオーガプロトコルを使用しないはずです。
仮にグリフィン産でこの連絡系統が利用できるとすれば、それはM16A1のように鉄血化した戦術人形…通称「傘」ウィルスによってプロトコルを書き換えられた人形のみのはずです。
UMP45の正体に気づくドリーマー
デストロイヤーが気づいた侵入者はUMP45でした。オーガプロトコルを利用して侵入してきたUMP45の存在を確認したドリーマーは、UMP45に対して電子戦を仕掛けます。
鉄血の中でも電子戦に特化したドリーマーにとってはこの上ない好機でしたが、404小隊の奮戦もあり惜しくも取り逃しました。涙ながらに謝罪するデストロイヤーを叱るでもなくドリーマーはある事実に到達します。
ドリーマーにとってその情報はとても有益なものでした。それはデストロイヤーの失敗を補ってあまりあるほどの収穫です。ドリーマーは「あのお方」に報告できる良い土産が出来たことを喜びます。
ドリーマーは電子戦をするうちに、UMP45が傘ウィルスに汚染されていないことに気づきます。にもかかわらずUMP45はオーガプロトコルを利用した。それはつまりUMP45が自分たちと同じ系列の人形であることを意味します。
『DSI-8』それがUMP45機体の由来です。そしてこれは鉄血の電子戦用OSです。
UMP45のベースは鉄血OS『DSI-8』
2020年1月、先行サーバーでは偏極光 -POLARIZED LIGHT- というイベントが行われました。そのストーリー上では、鉄血のドリーマーとデストロイヤーが「DSI-8の改造機体である」と触れられています。
そしてUMP45とUMP40は、同じくDSI-8系統の古い機種から作られています。これは国家安全局がある極秘作戦において、製造が中止されていたDSI-8モデルを利用したことが始まりです。つまり両名は国家安全局の管理下にあります。
市場に流通すらしていないDSI-8をベースに違法な改造を重ねられたUMP40とUMP45に課せられた使命は「グリフィンの人形に偽装してスパイ活動をすること」でした。
DSI-8をベースにした機体などグリフィンにはありません。何かあっても修理などはできないでしょう。UMP40とUMP45は最初から作戦終了までの使い捨てのコマとして、廃棄処分を前提として送り込まれたのです。
UMP40は自分から性格を変えた
話をUMP40に戻します。
今回の議題は深層映写におけるUMP40と物資箱から出てくるUMP40の性格が違う点についてですね。これに関して、私は「性格は変わってて良い。むしろ変わって当然だ」と言いました。これにはひとつの根拠があります。
それはUMP40が自分から意図的に性格を作り変えたと考えられるからです。
自分の任務に思い悩むUMP40
先程、UMP40はある極秘任務のために送り込まれたスパイだと説明しました。そして後にある事件が発生した時に迷いなく行動できたことを見ると、UMP40はそれらの任務や同じように潜入していた各個体の情報も熟知していたと考えられます。
しかし後にUMP45にも吐露するように、UMP40自身は内心では「本当にこれでいいのか」「自分の運命は変えられないのか」と悩んでいました。
そんな中、UMP40はUMP45に出会います。
初期のUMP45は今のUMP45を知る人からは想像もつかないくらい弱く、頼りなく、小さな人形です。とても臆病で射撃精度も悪く、教官には怒鳴られ、ダミーをほしいと言っても断られビクビクしながら暮らしています。
それもそのはず、電子戦用のOS「DSI-8」を積んでいる素体は実戦には向いていません。またUMP45は自身に課せられた任務をこの時点では明確に把握していなかった(伝えられていなかった)と考えられます。
理由はおそらく、UMP40に何かあった時の代わりにするため。
UMP40の代替機として作られたUMP45が引っ込み思案で臆病なのは、自分で考えて活発に行動することを予防するためーそのような「自分から考えて行動を起こすことが無い」ような初期設定で組まれたからだと考えます。
身代わりとして送り込まれた弱々しい人形UMP45。彼女と接するうち、UMP40は次第に任務から逃れる方法を真剣に考え始めます。そして何かあった時にUMP45が一人でも行動できるために彼女を指揮権限下から外し自身の管理下に置きます。
そして事あるごとにUMP45に「人間に従うだけが人形の生き方ではない」「自分の生き方は自分で選んでいい」と語りかけます。それはまるで自分で自分に言い聞かせるようでした。UMP40はUMP45を自分と重ねて見ていたのかもしれません。
人形は人と同じく変化できる
それは同時に自分自分を変えることでもありました。もし仮に、UMP40の本来のメンタルモデルが明るく活発でありながら根底に弱いものを持っている物であったとしても、ここから脱出するためにはその弱さは要りません。
また同時に、UMP45の本来のメンタルモデルが臆病で自分から行動を起こしたり決断できないものであっても、同じく自由の身になるにはその弱さは克服する必要があります。
どちらも、「変わる」必要があるのです。
UMP45の回想に登場するUMP40はしきりに「変わること」を求めてきます。そしてその中に自分も含めています。これは「UMP45が変わるだけでは現状を打破できない」と彼女なりに考えていたのだろうと思います。
UMP40は自分を任務から解放する方法を常に考えていました。そして仮に自分が助かることが出来なかったとしても、姉妹機であるUMP45が助かれば間接的に自分を救ったことにもなると考えていたはずです。
そのためUMP40はUMP45が一人になったとしても動けるような模範となるような強さを見せます。持ち前の明るさと前向きな姿勢を全面に押し出し、弱虫な自分の心を封じ込めます。それはまるで小隊のリーダーのようでした。
きっかけは胡蝶事件
そうやって暮らすうちに、ある事件が起きます。国家安全局は要人確保のために鉄血の工場を襲撃します。なんやかんやあって、工場内の鉄血製人形は暴走を開始。基地防御AIは暴徒と化した鉄血製人形の一掃を決定します。
UMP40は暴走した鉄血製人形を倒していきます。彼女は自分を含め鉄血をベースにした個体が複数体入り込んでいることを知っていました。その正確な数字もです。戦闘を続けること8回、全ての鉄血個体が倒されたことを確認します。
動揺するUMP45の手を引き脱出地点まで到達したUMP40はAIが自分たちを感知して防御プログラムを起動させたことを告げます。そして感知下にある最後の鉄血人形である自分達の「どちらかの機能が停止すればAIが止まる」ことを告げます。
これはUMP40のついた嘘です。AIが感知しているのはあくまでUMP40だけであり、UMP45はUMP40のダミー扱いなのでUMP45の機能を停止する必要はありません。
しかしUMP40はそれを隠し、あたかも「ここで生き残ったほうだけが脱出できる」というような説明をします。
UMP40は防衛プログラムが停止すればここから脱出できることを知っていました。その条件はAI検知にかかった鉄血製人形が全て機能停止すること。つまり、UMP45がここでUMP40を射殺するということです。
UMP40はUMP45に迫ります。ここでこのまま死ぬか。自分を倒して生きるか。
選択を迫られたUMP45は、遂にUMP40を撃ちます。
変わることで命をつないだUMP姉妹
UMP40が残したもの
UMP45は生き残るために強くなりました。自分を一番近くで支えてくれた最大の理解者を自らの意志で撃てるほどに。きっとUMP40と出会ったばかりの臆病なUMP45であれば、そのようなことは不可能なことだったでしょう。
「強くなったね。UMP45」
UMP40はUMP45に語りかけます。そしてここに来て初めて、UMP45は彼女が「最初から自分を逃がすためだけに動いていた」ことを理解します。
UMP45はUMP40に「どうしたこんなことをしたのか」と問いかけます。それに対してUMP40は「この先ももっともっと辛い”選択”をしないといけなくなる時が来るから」と答えます。
「強いUMP45」が必要だった
UMP40はUMP45に自分を殺すという試練を与えることで、今後彼女に降りかかる様々な困難を乗り越えるための力を与えたかったのです。
しかしここに来てUMP45は躊躇います。そこまで自分のためだけに動いてくれた彼女を殺めなくてはならないのか。他に方法はないのかと問いかけます。しかしUMP40はそれを許しません。自分を殺して先に進むように言います。
ここでUMP40を殺せないような「弱いUMP45」のままでは、たとえここから逃げ延びたとして生き残ることは出来ません。一人で生きていくためには強くならなければなりません。変わらなければなりません。
それがたとえ本来のメンタルモデルとは違うものだとしても。
UMP45は生き残るために「強いUMP45」の仮面をかぶります。それはUMP40とUMP45が二人で作り上げた仮面でした。UMP45はUMP40を自らの手で殺し、施設からの脱出に成功します。
私達がよく知る、強いUMP45の誕生です。
変わらなければならなかった二人
これが、UMP40とUMP45が自身の性格を変えた経緯です。彼女たちは生き残るために、自由を手にするために変わる必要があったのです。
もともと二人は国家安全局によって任務遂行のために作られました。そのためメンタルも弱い状態に設定されていたと考えられます。勝手に自由行動を取られては困るからです。UMP40が弱い太陽(陽)だとしたらUMP45は弱い月(陰)です。
自ら行動が出来ない弱い個体と、根幹に弱い部分を持つ個体。これなら任務遂行に支障はないはず。そう設計者は考えていたでしょう。しかしその設計には一つだけ欠陥がありました。その太陽と月が支え合って強い個体を創り出すという可能性です。
弱いUMP45と本当は弱いUMP40は、強いUMP45を創り出すことに成功します。そして強いUMP45は国家安全局の手を逃れ、なんやかんやあってアンジェのもとにつき、裏小隊とも呼ばれる404のリーダーとなります。
その後の活躍は皆さんもご存知のとおりです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「物資箱から出てくるUMP40の性格が深層映写でUMP45を支えたUMP40の性格と違うんじゃないの?」という指摘に対する私なりの答えです。性格が違うというより「生きるために性格を変えた」というのが私の考えです。
人形が人の作った単なる機械であれば自分で考えることも感情も必要ないはずです。したがって変わる必要はありません。しかしドールズフロントラインの世界において人形は『変化』を求められることが多々あります。まるで人間のように。
AR小隊のリーダーM4A1やそれを支えるように設計されたRO635。また秩序乱流時に必要に迫られて過去の自分から変わることを迫られたSOP2MOD2のように、人形は時として自分の意志とは関係なく「変わる」ことを求められます。
そしてUMP40もまた、自分という存在を残すために変わったのです。
余談ですが、本編に置いてこのような『変化することが可能な戦術人形の仕様』は多くの人形を混乱させています。先にあげたM4A1しかりRO635しかり。彼女たちはなぜ人間がこのように自分たちをデザインしたのかを訝しみます。
彼女たちは自分で考え行動すること、あるいはそれが出来ることを不思議に思い、事あるごとに「考えたくない」とか「命令をしてほしい」と望みます。人間に与えられた使命を全うするのが人形の本分だと考えているからです。
自分で考えることができる人形。それはもはや人に似た何かです。
鉄血にしろIOPにしろ、なぜ人に近しいものを作ろうとしているのか?それを考えながら本編を追いかけていくと、また違った楽しみが見えてくると思います。
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