重課金者は優遇されたほうが良いって本当?

昔からオンラインゲームをはじめとしたネットサービスで「重課金者は優遇されたほうが良い」という話をよく聞きます。しかしこれは本当のことなのでしょうか?「お得意様は大切にしたほうが良い」というお客様第一主義の考え…実はこれ、経済学では少数派なんです。

ヘビーユーザーに対する過度の優遇措置は、世界的なビジネスの場ではあまり評価されていません。ではなぜそのようにヘビーユーザーは高待遇を得られていないでしょうか。今日はそんな経済や経営に関するお話です。

1.重課金者は優遇されたほうが良いって本当?

いつの世もお客様目線の利用者は後を絶ちません。お客様は神様なんだからもっと大切にしろとか、私は上客なんだから他の客より丁重に扱えと言ってくる人もいます。果たしてこれは本当なのでしょうか?

1-1.必ずしもそうとは限らない

結論から言うと、その利用者が沢山お金を使ってくれるからとかヘビーユーザーであるからという理由だけで待遇を良くするかどうかを決める必要はありません。サービスの提供者がユーザーをどのように遇するかは、そのチームが求める企業戦略によって決まります。

たとえば平均的な利用者と比較して10倍以上購入している人からすると「私はあの客の10倍のお金を支払っているんだから10倍の接客を受けるべきだ!」と思う人もいるかもしれませんね。しかしこれは間違いです。

そのひとつひとつの取引のうちそれぞれで正当なサービスの提供を受けたのなら、そこでお金(支払い)とサービス(対価)は一致し、契約は完了します。契約がそこで完了した以上、それ以上のものを要求するのは不当要求です。

これだけ買ったんだからとかおまけしろ、あるいは値引きを入れてくれ、と言ってくるような客と同じです。基本的にサービスに対する支払いが正当であった場合、それ以上のものを要求するのは相手の利益を奪うこと、つまり損害を与える行為でもあります。

1-2.どういう待遇にするかは提供者側が決める

もちろんサービスの提供側が感謝の気持ちをつけるのはよくあります。沢山お金を使ってくれる人にポイントサービスをつけるとか、溜まったポイント額に応じて優待サービスを付与するなどはよくある手法です。

ただこれはあくまでサービスの提供者側の善意と打算によるものであって、利用者側が権利として主張するもの・出来るものではありません。

2.顧客の20%が全体の80%を売り上げている

パレート図 全体の80%の顧客はライト層

顧客全体のおよそ2割が売り上げのうち8割を占めているというのは経済学ではある程度浸透している内容です。これを提唱したのはイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレード。このためこの数式のことを パレードの法則 と呼びます。

これを裏返すと、残りの80%は20%の貢献にとどまっているということでもあります。単純な足し算引き算ですね。この場合、運営は20%のヘビーユーザーと80%のライト層のどちらを大切にしたほうがいいでしょうか。

2-1.20%のユーザーを優遇するとどうなるか

企業が現状に満足しこれ以上成長戦略を採らない場合は、ヘビーユーザーに対する補償を厚くするのが良いとされています。しかし企業がこのような戦略を採用した場合、そこにかけられたお金はサービス全体には行き渡らないということがあります。

具体的に言うなら上位陣だけが楽しめるコンテンツを実装したため運営費が足りなくなり広告費用が足りなくなったケースとか、一般受けしないサービスばかりお金をかけてユーザーが離れてしまった場合などです。

このなると、ライト層はサービス全体のクオリティに不満を抱きがちです。コンテンツを楽しむためにはヘビーユーザーのような高い敷居を越えなくてはならないため、それなら…と、もっと気楽に遊べる場所を探しに行きます。

2-2.新規ユーザーが止まって成長も止まる

ライト層を失いシェアが減少している様子

ライト層に見放された場合、そのコンテンツは新規獲得が困難になり成長を止めます。市場が成熟することはあっても規模が拡大して行かないのです。

市場を拡大するためには外にいる顧客を取り込む必要があります。なぜならヘビーユーザーはすでに多くのリソースを提供してしまっており「それ以上伸びが期待できない」ですからね。

現状で支えているユーザーだけでサービス全体が完了しているならそれで良いかもしれません。しかし市場シェアが小さくなればそれだけで経営が苦しくなってくるものが大半です。ネトゲに例えるなら 古参はいるが新規がおらずまともなイベントも数年やっていない過疎った長寿タイトル です。

古い国産MMORPGなどでこのような現象が多発しています。思い当たるタイトルがいくつも出てきますね。名前を挙げるのは怒られそうだからやめておきます。

その古参がどれほどのヘビーユーザーだったとしても、一人がやれることには限りがあります。そのため企業はまだ見ぬ顧客を獲得するために動きます。

3.売り上げを伸ばして成長するには

企業が現状に満足せずさらなる成長戦略を採るのであれば、残りの80%のライト層に対して補償を手厚くするほうが良いとされています。それが次のライト層を呼び込むことにつながるからです。

特にインターネットの利用が広く普及した現代では企業側の宣伝以外にも他ユーザーの口コミが瞬時に広まっていきます。「なんかこれ面白そう」といったものがあれば注目されます。その時、敷居が低ければ低いほどとライト層は入ってきます。一見さんお断りの高級店に庶民が入らないのと同じ原理です。

3-1.ライト層を多く獲得する

そこで企業はライト層の獲得に動きます。

具体的には各種SNSで宣伝を行います。このとき出来るだけ敷居を下げる必要があるためとっつきやすいキーワードやキャッチーな映像を利用します。「目を引くイラスト」や「誰でも簡単!爽快プレイ!」といった広告を見ませんか?あれです。

また他のコンテンツ(たとえばアニメとか)を利用することで興味を持ってもらうよう努力をします。すでに多数のユーザーを獲得している企業がTwitterでいつも宣伝していたり、他企業とコラボするのはそのためです。

もしこの拡大戦略を軽んじるとどうなるでしょう。競合他社が新しくサービスを開始したり生活環境が変化すれば、ユーザーは違う選択肢も確認しに行きます。そこで満足のいく結果が得られると、ユーザーは戻ってこないかもしれません。

通常の経営者であれば、「我が社の商品にはファンがいるから大丈夫」などと言って現状に甘んじ、このような現象を無視したりはしません。それでは成長しないどころか倒産する危険もあります

3-2.ライト層の囲い込みを行う

こういったライト層の流出は企業努力によって防げるものなら防ぐ必要があります。仮に一時期ほかの遊びに夢中になったとしても、やっぱり一周回ってこの商品が好きだと思って戻ってきてもらう必要があります。

たとえばオンラインゲームでいうなら、現状ゲームをプレイしている人口(ゲーマー人口)はある程度決まっています。これがある日を境に急激に2倍3倍と増えてしまうことは無いでしょう。家庭用ゲーム人気も根強いですしね。

そうなると企業の成長戦略は限られたパイをいかに多く手に入れるか、つまり 如何にして競合他社よりも多くのゲーマーを獲得するか が焦点となっていきます。

その場合、自身のヘビーユーザーに対して企業資金を過剰に注ぎ込むのは危険です。それよりも新たに始まったサービスに人が流れないよう、あるいはほかのサービスから人が流れてくるよう、圧倒的に人数が多いとされる「それほど真剣にゲームをしていない層」つまりライト層に狙い打つ必要があるのです。

4.ヘビーユーザーへの待遇は企業次第

もし自分の受けているサービスがヘビーユーザーを優遇していないタイプのものだとしたら、彼らが思ったほど優遇制度を受けられていない理由が見えてきます。それをまとめると次のようになります。

  1. サービスの提供者が現状維持ではなく拡大成長戦略を採用している
  2. サービスの中で敷居が高い部分のコンテンツは一般受けしない
  3. 全体のシェアを考えるともっと優遇すべき相手がいる
  4. 自分が思ってるほど自分の影響力は高くない

ヘビーユーザーを優遇しないよりはしたほうが良いのは経営陣も分かっていると思います。しかし現状ほとんどの企業はシェア獲得のために動いています。そういった段階ではヘビーユーザーに傾倒するのは難しいでしょう。

むすびに

いかがでしたでしょうか。今回はSNSなどでよく話題に上がる「俺は上客なんだから運営はもっと優遇しろ」という主張に対する答えの一つです。一般的にシェアの奪い合いを行っているサービスを提供している企業において、そのような理屈が通りにくい理由が、ある程度分かっていただけたかなと思います。

無論このようなケースとは逆に、例えば会員制の高級ホストクラブや限られたメンバーだけが出入りを許されているようなサービスにおいては「新たな新規を獲得する必要がそもそも無い」ためヘビーユーザーが優遇されてます。株主総会での発言権なんかを見てもそうですね。一般株主と大株主では意見の通り方は違うはずです。そこには明確な差がありますし、そうあって然るべきです。

もし自身を高待遇してほしいのであれば、そのようなサービスを提供してもらえる場所で必要な対価を支払って、十分な社会的地位をつけるのが良いでしょう。すくなくとも一般的なソーシャルゲームのようなサービスにおいて「課金したから」という理由で高待遇を要求しないほうが無難だと思います。

ちなみに私個人の意見としては上客優遇はアリかなぁと思ってます。根強いファンって大切にしたいですからね。なので自分は経営者には向いてないということでもあります。まぁ今後の人生で経営側になることはそうないと思いますけれど。

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